2016年2月10日水曜日

日本に蔓延るエビデンスレベル原理主義者たち。

■エビデンスレベルが低いからインチキなのか?■

よくエビデンスレベルが低い療法だから効かない、RCTしてない療法はインチキ、といった誤ったEBMに従って行動されている方が多く見受けられます。

確かにEBMでは【理論的には】エビデンスレベルが高い研究(大規模・ランダム化・レビュー)ほど信頼できます。

ですが現実は違います。

■エビデンスレベルが重要でない実例■
例1)
デベルザ(糖分を尿に排出させる医薬薬)を一般的な健常者が20mg摂ると、
通常は1g/日以下しか尿に糖分が排出されないのが、大体40~60g/1日ほどまで排出されるようになります。
デベルザを摂取して尿から糖分が50g/日検出された結果をみて「これはプラセボ効果かもしれない」という医師はどこにもいません。

例2)
心臓マッサージが世に広まったのは1960年頃のJAMAに提出された論文が元です。
この論文は20例の症例が記載されたものです。
これを期に麻酔で心停止した患者さんのより多く生還するようになり、現在は手術以外にも広く行われています。
心臓マッサージを「エビデンスレベルが低いから信用できない・効果の無い治療法」という人はどこにもいません。

■症例報告のみの療法のほうがRCTより有用な事が多い■
プラセボ効果・バイアスという言葉が出るということは、その療法の効果はプラセボ効果やバイアスに埋もれてしまうほど小さいということと同義と私は考えています。
そして「効果がはっきりわかる症例報告のみの療法」のほうが「RCTは行われているが、RCTしないとプラセボ効果かどうか分からない療法」より有用と私は思います。

■現実の抗がん剤治療はEBMに則ってない■
1)抗がん剤治療のRCTの対象者は非常に偏ったグループであり、実際のがん患者にそのまま当てはめられない。(肉体的に余裕がある患者のみに行われる)
2)医師同士がEBMを実践するために情報交換する際は図(生存曲線)や表を頻繁に使うが、これを患者に説明する際(例:インフォームドコンセント)にはまず使われない。

■総評■
エビデンスレベルで療法を否定するのは、心臓マッサージをはじめとする現代医学を否定する行為に他ならない。
清く正しいEBMが広まることを望む

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